外側から見てみたい

地球に生まれて暮らして早幾年

えっ、2024年…?という驚きと、読書は逃げなのか救いなのか学びなのかという話

今日は鏡開きですね。
我が家は七日に神棚の餅も下げて七草粥に入れてしまうスタイルなので特に何もしないのですが。笑
祖母が健在だったころはお汁粉作ったりしていたな。

さて2024年。
2024年という字面を見たら唐突に「わあ、未来だ」と思ってしまった。

子どもの頃、2020年は完全に未来だと思っていた。
車輪のない車的な乗り物がレールに沿って自動で走ったり、ゴミなんかは浄化システムと自動リサイクル装置で再生・循環されて環境問題は解決して、空気も空も澄んでいて、地球のことも解明されて自然災害のリスクは回避できる生活環境が構築されて、人類同士の争いも終結した、穏やかな世界が待っていると思っていた。(私の頭の中の21世紀は21エモンの世界なのだが)
実際は全くそうなっていなくてそれはそれでガッカリしているのだが。
世界が刺激的過ぎて驚きを通り越して疲弊しているので、私はそういう刺激のない平坦な世界でもすんなり生きていけそうだと今のところ思っている。
でもそんな世界になったらなったで人間というのは徐々におかしくなっていってしまうのかな、という不安を抱くのは、伊藤計劃の「ハーモニー」のせいだな。
久しぶりに読もうかかな。
昨年は久しぶりに「虐殺器官」を再読したら、何これ、預言書…?とゾッとした。ジョン・ポールはもしかしてこの世界にも既に実在している?なんて考えてしまう程度に、この世界の物語な気がした。
虐殺器官の舞台は2027年とかでしたか…?近いな。

私は30歳くらいまでSFに興味がなくて、警察小説とかミステリとか時代小説とか“この世界”と地続き的な物語ばっかり読んでいたのだが、当時ドはまりしていた田中圭が舞台に出るというので銀河英雄伝説を観劇前に読破したのをきっかけにSFにも興味を持つようになって読むようになった。

余談だが田中圭ヤン・ウェンリーはめちゃくちゃに良かった。機会があったらオタクは全員見てほしい。
間宮祥太朗のラインハルトと橋本淳のキルヒアイスのコンビネーションも最高だった。

舞台 ・銀河英雄伝説 | 初陣 もうひとつの敵 オフィシャルサイト
銀河英雄伝説はSFというか、スペースオペラというのですかね?歴史小説のような所がすごくおもしろかった。

人類は別の惑星に移り住んでも争うんかいという。
とても人類らしい物語だなあと思った。

英伝で味を占めた私はまず「華氏451度」を手始めにレイ・ブラッドベリを読みまくった。
ブラッドベリの物語は生きる刹那や寂しさもあるけれど、暖かくて希望があって大好きになった。
華氏451度」も大好きな一冊だが「宇宙船」という短編を読んだ時には号泣した。
こんなにまっすぐで温かい物語ってほかにあるかな。自分も誰かがくれるささやかな幸せを心の底から喜べる日々を送りたいなと思った。
創元SF文庫の「ウは宇宙船のウ」の中に収録されているのでめちゃくちゃにおすすめしたい。

ウは宇宙船のウ【新版】 - レイ・ブラッドベリ/大西尹明 訳|東京創元社

かと思えばSFは結構な勢いで絶望も突き付けてくる。
先にも書いたが伊藤計劃の「虐殺器官」なんかはディストピアだしいわゆるメリーバッドエンド。外側からは完全なバッドエンドだが、主人公のクラヴィスにとっては世界が壊れる音は自分が選んだ道なのだから満足してるっぽい…?

SFなのかミステリなのかよくわからないけれど、変な物語もたくさんある。
私が偏愛する作家のひとり、殊能将之の「黒い仏」なんかはキャッチコピー?が「名探偵は蚊帳の外」だった。そのフレーズの通り、主人公が謎解きを披露して解決したと思ったら、実はその裏側で人智を越えた存在たちが壮絶なバトルを繰り広げていたというとんでもない終わり方で、ひっくり返った。
「キマイラの新しい城」とかももう腹がよじれるほど笑った。M1優勝できるんじゃないかなくらいのすれ違っているのに全てが嚙み合っているコントみたいな物語。
例えば仕事で全く話が通じない事象が起きて、なぜかこちらに非がある雰囲気に上司が持って行こうとするような時には、私は殊能センセーの物語を体験しているので「これはここの世界ではなく、彼の地でなにか妙な事件が起きているのやもれぬ」などと心の中で考えることで冷静になったりする。

私の毎日なんて生まれてからずーっと平凡なのでたくさんの物語が結構生き方とか、考え方とか、戦い方も。やり過ごし方も、逃げ方とかも教えてくれているなあと思う。
「読書嫌いのための図書室案内」の藤生さんもそんなことを言っていた。

読書嫌いのための図書室案内 | 種類,ハヤカワ文庫JA | ハヤカワ・オンライン

自分は多読な読書家ではいけれど、読書って楽しいなあって、最近改めて噛み締めている。
今年最初はこれも再読で、法月綸太郎先生の古典ミステリ愛が大爆発したSF作品の「ノックス・マシン」を読んでいる。
刊行された時以来の再読だけど、表題のノックス・マシンが記憶の数倍素敵な話でふるえている。
元の世界には戻れないと絶望した主人公チンルウにノックス神父が言った「世界はそううやすやすと枝分かれするようなものではない」という強い言葉が2024年最初に私の背中を押してくれたような気がしている。